森のひとりごと

2019年12月28日

2019.12.28

 「幕末下級武士の絵日記」という興味深い本を読んだ。現在の埼玉県行田市にあった忍藩(おしはん)という10万石の藩の下級武士であった尾崎石城という武士が書き残した「石城日記・七巻」という古文書をわかりやすく解説したものである。この「石城日記・七巻」は現在、慶応義塾大学文学部古文書室が所蔵しているとのこと。江戸時代末期の小藩の下級武士の暮らしに触れることのできる貴重な資料である。この解説書によって初めて実感を持って侍の毎日の暮らしに触れることができて面白かった。下級武士は毎日登城するわけではないので時間に追われずに暮らしていたことに先ずは驚いた。そのうえ日記を書いた石城は咎めを受けて逼塞を命じられているので時間を待て余しているくらいだ。したがって大量の古書を読み、武芸を磨き、仲間と語らい、そして朝酒をも辞さないという暮らしぶりを続けていることになる。当然のことながらしばしば二日酔いで苦しむこととなっている。生活はひっ迫しているのに他人に施しをする。弱者を見過ごすことができないという美学に立って生きているのだ。そして「情けは人のためならず」と独り言ちてまた飲むという日々なのだ。僕も他人のことは言えない毎日だけれども石城も毎日飲んでいる。僕らの時代と違って日本酒しかないのだからとても敵わないなあと思わされた。ビールを飲んだり焼酎にしてみたりワイングラスを傾けたりという腰の引けた飲み方じゃないのだからなあ。そもそも氷が手に入らない時代なのだ。僕らのような軟弱な酒飲みではないということだ。宴会が多い時期に手にした本としては時宜を得たものだったのかもしれないなあ。どうせ敵わないのだから少しづつ酒量をセーブしていきますかな。二日酔い防止の薬を飲みながら酒を飲んでいる毎日を猛省しなくてはね。

 毎年のことですが、今日からしばらく冬眠します。今年も一年間多くの人の温かいご理解ご協力をいただきました。感謝に堪えません。大変お世話になりました。来年もよろしくお願いします。

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