七番、ライト森君!背番号47!

森 雅志 1995.07


 澄み渡る青空。照りつける陽光。額に汗を浮かべながら僕はライトの守備位置めがけて走った。黒い土の内野グランドにスパイクの跡が並んでいく。外野の芝生の見事なまでの緑が目に飛び込んでくる。
 「いよいよだな。」と僕は思った。その時、福井県営球場は確かに燃えていた。途中出場とは言えついに僕のデビューの時がやってきたのだ。定位置につき、ピッチャーが投球をするのを見ながら初めて練習をした日のつらかったことを思いだしていた。
 僕は小さいときから運動神経が良くなかった。走るのも跳ぶのも投げるのも下手くそだった。自他ともに認める運動オンチだったのだ。だから野球についても小学校の頃に渋々参加していた程度の経験しかない。野球というのはテレビで巨人戦を見ながらストレスをためるか、缶ビールを片手にスタンドから観戦するものと決め込んでいたのだ。そんな僕が今になって野球を始めることになるなんて誰が想像できたであろう。昔の僕を知る人たちが耳にしたならきっと笑い転げるに違いない。
 しかし今になって僕は富山県議会野球チームのメンバーとなることを余儀無くされた。新人議員は全員加入だとの前例に抗うこともできずついにユニフォームに袖を通すこととなったのだ。
 そしていよいよ練習が始まった。ランニング、ストレッチングを手始めにトスバッティング、守備練習、フリーバッティングと続いていく。僕は彼の日の長島茂雄も如何という酷しい練習に耐えたのだ。その間、流れる汗とともに何かしら充足した気分が全身を突き抜けていった。満足した気持が充満してきたのだった。こんなことなら若いときからもっと積極的にスポーツに親しんでくるのだったとさえ思えてくる。こうして僕は生涯スポーツ実践者の仲間入りを果たしたのだ。
 人は何かしらのきっかけで全く新しい世界に踏み込んでいく。臆病になっていたものが解かれてみると新鮮な感動が待っているものなのだ。
 これからも僕はいろいろと新しい岸辺に立つかも知れない、そんなときただ水面を眺めているだけはなく思い切って泳ぎだしていこうと思う。向こう岸にあるものを追い求めていこうと思う。迷っている時間はない、もう若くはないのだから。青春万歳!


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