酒と涙と……カラ出張!

森 雅志 1997.10


 やっぱりカラ出張問題が出てきた。

あまりの馬鹿馬鹿しさにあきれてしまうが、県庁内においてほぼ全庁的にカラ出張が発覚したのである。大のオトナがみんなでそろってテンプラ書類を作成していたのである。

 事情はどうあれ、恥じることもなく長年にわたって慣習化していたのである。それだけに一人一人の職員に罪の意識はなく、一種の必要悪なのだという認識だったのかもしれない。もっとも中には個人のふところに入っていたものもあるのだから弁解の余地はないと言わなければなるまい。

 議会も監査委員会も批判されて当然だ。自らの責任を意識し、多いに反省しなければなるまい。もっとも辻褄があうように綴られた書類を監査したところで表面的には判り得ようもなく、チェックシステムをどう再構築するのかが問われることになるのだ。同時に、なぜもっと早くに内部から問題視する声が出なかったのか?とも思う。いずれにしても関係者の猛省をうながしたい。

 さて過日、ある会議の席上でこの問題に対する見解を求められたひとりの幹部職員が、謝罪と反省のコメントを開始してすぐに涙で言葉をつまらせた。その後も、用意したペーパーを読みながら何度も嗚咽につまった。ついには声を出して泣いたのである。しかし眼鏡を外しハンカチで目頭を押さえながらも彼は最後までコメントをし終えた。そして結びには再出発をはっきりと誓った。

 突然の涙であった。それだけにその場にいた者たちは驚き、そして黙ってしまった。誰もが複雑な思いであった。その時に彼を支配した心情は一体なんだったのかと思う。悔恨、反省、屈辱感、口惜しさであったか。実態調査の責任者としての同僚や部下に対する様々な思いがそうさせたのか。人間の弱さの発見や誇りとの葛藤だったのかもしれない。

 いずれにしても数ケ月の間に欝積していた思いが溢れ出たものだ。眠れずに飲んだ日もあったに違いない。泣きながら飲んだ日もあったろう。嗚呼、彼の心中の叫びよ。

 彼の心情の本当のところは判らないが、少なくとも彼の嗚咽する姿は僕の胸を打った。そこには正直に現実と向きあおうとする誠実さが感じ取れた。それだけに原点に戻って再出発を誓うと言った彼の言葉は真実だと僕は思う。頑張って欲しいと素直に思う。そして全ての県庁マンが彼のようであって欲しいと願って止まない。

甦れ!県庁マインド。


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