混浴に入ってみました

森 雅志 1999.06


妻と二人で青森へ行った。目的は弘前の「100円バス」のことを調査したかったからなのだが、ついでに八甲田山と奥入瀬渓流に足を伸ばした。前から一度、八甲田山の中腹にある酸ケ湯温泉に行ってみたかったのである。


この温泉は昔からある湯治場で、混浴の千人風呂で有名。妻は混浴と聞いて入浴を嫌がったので、僕が一人で古くて大きな入り口をくぐった。

先ずは入湯料500円を払い、売店でタオルを購入。場内は老若男女、いろいろなグループがあちこちで休んでいる。一目で長逗留だなと分かる人たちもいる。温泉備え付けの浴衣姿の人、登山やハイキングといういでたちの人、僕のようにチョツト興味があってという風情の人などいろいろである。


さて、脱衣場で裸になっていよいよ大浴場に入っていった。場内は湯気が立ち込め、障子窓越しの自然光だけの照明なので少し薄暗い。しかし予想以上に広く、なるほど千人風呂というだけのことはある。お湯は乳白色で全体に硫黄臭い香りがする。

湯船にはあっけらかんという感じで30人ほどの男女がつかっていた。さすがに混浴とは言え、男女がそれぞれあっち半分、こっち半分という風に別れて入っている。男性が比較的静かなのに比べ、女性の方はにぎやかにしゃべっている人が多い。みんな明るくて元気だ。

さすがに若い人は少ないけれど、まったくいないというわけでもない。

じろじろ見ているのも変だと思って、湯船に肩まで浸かってしばらく瞑目している風を装っていた。

みんな本当にあっけらかんとしている。

なんとなく日本社会の原形を見る思いであった。収穫の季節が終わった後でこうやって集まってお湯に入る。どの人もピカピカの顔で笑いあっている。そんな、かってそうであったであろう状景がそこにあった。チョットいいなと思った。


体も心もポカポカとさせながら風呂から出て、中の様子を妻に話してやった。

妻は「フーン」とは言ったがあまり興味を示さなかった。

混浴好きになられてもどうかと思うので、それでいいのかもしれない。

ふと目を転じたら、今出てきたばかりの湯船に老若男女、外国人も含めて300人ぐらいの人が笑ってつかっているポスターがあった。今度はこんな日に来たいな、と思った。そしてその時こそは妻にも勧めてやろう。


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