モバイル社会とサイバーパトロール

森 雅志 1999.10


 インターネットの普及には目をみはるものがある。通信白書によればインターネットの世帯普及率は11.5%とのことであり、2005年には40%を超えるという予想もある。今後とも社会の各般にわたってインターネット取引が本格的になるものと思われる。
 僕自身も最近はパソコンを持ち歩き、旅先からもメールをやり取りしたり原稿を直接送信したりしている。大げさに言えば、僕もモバイル社会の立派な一員なのである。

 ところで物事には功罪の両面があるものであり、電子通信メディアの世界にあっても例外ではない。なんて言っても場所的、時間的に制約がないという大きなメリットがある反面、さまざまな問題も抱えているのである。
 先日、警視庁においてハイテク犯罪の対策現場を視察する機会を得た。
 警視庁では、50名の専任体制でハイテク犯罪の対策にあたっているとのことであったが、とりわけ各種の違法な取引や情報を検索する、いわゆる「サイバーパトロール」は24時間体制で取り組みがなされている。
 ハイテク犯罪の具体例としては猥褻図画の掲載をまずあげることになるが、ほかにもカジノのサイトや改造拳銃や密輸銃の取引サイト、薬物の取引などが典型だそうであり、さらにはこういった違法取引の前提となる「架空口座の販売」が目下の最大の捜査ターゲットとなっているとのことであった。

 「架空口座の販売」掲示板を見せてもらって驚いた。一件あたり25,000円程度を指定の口座に振り込むと、都銀、地銀各行の架空口座がいとも簡単に取得でき、カードが送付されてくるのだそうである。後はこの口座を窓口として違法取引を開始するということになり、実際の行為者を摘発することを困難にしているとのことであった。
 また、合成映像や名誉毀損にあたる誹謗中傷文章の掲示、ビジネスの妨害など影響が大きく解決が困難な犯罪が拡大しているというのである。延長線上にはサイバーテロとでも言うべき公安上の大問題の発生さえもが考えられるわけであり深刻である。

 しかしながら無数にあると言ってよいくらいに開設されるサイトのすべてを把握することは不可能であり、何よりも法整備の不備も問題である。プロバイダーを中心としたルール作りやセキュリティー体制の確立のための不正アクセス法案の立法が焦眉の急なのである。更には国内におけるハッカー対策がほとんど無防備であることも心胆寒からしめることである。

 モバイル社会だからこそ以上に述べてきたような「負の部分」と戦わなくてはならないのだが、最後はモラルの確立ということに尽きるのだと改めて思わせる視察であった。


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