お洒落はフリースタイル

森 雅志 2003.04.01


 過日、帰宅した娘を見て驚いた。短かった髪の毛が突然背中まで伸びていたのである。カツラなのかといぶかっていると、「エクステンション」というものだと教えてくれた。伸びているのだから確かにエクステンドしてはいるのだが、仕組みが分からない。訊ねてみると「付け毛」だと言う。人毛の束を少しずつ自前の髪に編みこんでいくのだそうだ。驚くことに三ヶ月くらいは自分自身の髪のようにして生活できるらしい。いやはや。
 一方、妻のほうは時々ショートカットのカツラを着用して楽しんでいる。そういう意味では伸ばすのも短くするのも自由時代になったと言える。かつて「僕の髪が肩まで伸びて〜♪」という歌があったが、肩まで伸びる間に二人の想いを育むなどという情感は今の時代には通用しないのかもしれない。
 思えば僕が二十歳の頃、極端なミニスカートと「付けまつげ」が流行していたが、(ミニスカートの方はともかく)女性が持っているケースの中に長いまつげが鎮座している様子を見て、化粧とは言えモノ凄いことになったと思った記憶がある。しかしもっと驚いたのはその数年後、ある女性から「付け爪」なるものを見せられた時である。彼女は僕の目の前で自らの爪を剥いで見せてくれたのだった。僕は唖然としながらも「やがて必ず、付け眉や付け耳、付け唇などというものも出現するゾ。」と連想して一人笑いしていた。
 しかしその連想が荒唐無稽なものでなかったということが昨今の若者たちを見ていると思い知らされる。若者たちは人工の眉や耳を身に付けてはいないものの、耳や鼻、唇などに穴を開けたうえで金属製のリングを付けている。過激な人は舌や臍にまで使用しているという。
 もっと言えば手術によって美容をする時代にさえなってきている。軽いノリでイレズミをする者もいる。
 もちろん個人の問題である。僕がとやかく言うことではない。若者たちが自らの肉体を切り刻んでいようが精神を蝕まれていようが、フリースタイルの時代なのだからなんでも自由なのだ。「親から授かった五体」をどうしようが勝手にしやがれ!と一人で開き直ってみても虚しいだけか。
 娘の「付け毛」からイレズミを連想する僕が時代に合わなくなっているのだろう。この際、僕も肉体改造を開始するか。「脂肪吸引」ってのはいくらぐらいするのかな?


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