カリフォルニアの狂騒

森 雅志 2003.11


 先に実施されたカリフォルニア州知事選挙において、アーノルド・シュワルツェネッガーが当選した。ターミネーターなどに主演した俳優であり、アメリカンドリームそのものを体現したオーストリア移民である。民主党が強い土地柄の上に、夫人がケネディ元大統領の姪であるにも関わらず共和党から出馬し当選した点がオモシロイ。財政危機に苦しむカリフォルニアの知事としてどのような手腕を見せるのかが注目されている。
 僕はこの選挙結果よりもカリフォルニアの選挙制度、特にリコール制度に興味を深くした。そもそもこの知事選挙は現職知事のリコール投票と同時に行われたのだ。リコールが成立してから改めて後任知事を選挙するということではなく、成立するかどうか分からないリコールの後任選挙を同時にするのだからややこしい。リコールが成立しなければ知事選挙は無意味なものとなるにもかかわらず135人もの立候補者が手を挙げたうえに、現職知事陣営はリコール阻止のキャンペーンを展開するわけだから騒乱状態となっていたのだ。結果的には「現デービス知事対共和党公認シュワルツェネッガーの一騎打ち」という状況になり、55.4%の賛成でリコールが成立、48.7%の得票率でシュワルツェネッガーの当選ということになった。
 カリフォルニアの制度では、前回知事選投票者数の12%の署名を集めればリコール投票を請求できることとなっている。因みにデービス前知事は昨年の11月に当選したばかりであったのだから、新知事としても安閑とはしていられない。住民投票によるリコール制度の目的は、政界と財界の癒着や腐敗を断つことなどであり、有権者の力を拡大するものである。しかしながら安易にリコールが頻発しては行政が停滞するし、知事の姿勢も有権者受けのする方向ばかりに向かうことになる。カリフォルニアにはこの他にも州議会議員の任期制限や財産税の引き上げ制限などたくさんの制度が住民投票で可決されている。また種々の公共サービスについても住民投票で決められているものもある。その結果、選挙で選ばれた州議会議員の権限が小さくなり、財源措置のない行政サービスが施行され、財政危機が深刻化するという状況を招いており、州議会が予算を期限内に成立させることができず一ヶ月間予算がないという事態まで発生している。
 このように住民投票によって知事選が頻発したり議会の権能が小さくなったり、財政再建の道が険しくなったりするとしたら、それは制度の限界と言えるのではなかろうか。住民投票がもたらすカリフォルニアの混乱から教訓を得たように思った。
 我が国も衆議院選の最中であるが、将来を見据えた議論が確実に展開されるような国会を実現するためにも、自らの判断に基づく投票行動をとらなくてはならないと思う。




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