顔のない督促人

森 雅志 2005.10.05


 しばらく前のことだが、我が家に「料金未納訴訟最終通達書」なるものが届いた。言うまでもなく、今流行りの架空請求というヤツである。宛名が妻の名前であることに気付いた僕はイタズラ心で訊ねてみた。
「インターネットで何か買って代金払ってないがじゃない?まさかアダルトサイトを見とった訳もなかろうしネ。」と。
妻はあきれた顔で僕を見ながら
「話題の架空請求が我が家にも届いたということね。こういうものは放っておけばそれで良いのに、法律用語みたいな言葉が並んでいるから、突然こういうハガキが来ると騙されて支払ってしまう人もいるんでしょうね。悪い連中が沢山おるもんだね。」
と答えながら憤慨していた。
本当に程度の悪い犯罪だと思う。
色々なルートで手に入れた名簿を元に、何の関係もない人に対して突然ありもしない未払い金の請求書を出すのである。その請求書には早く支払いしないと給与や財産を差し押さえると記載されており、そのうえにブラックリストに登録するとか勤務先に押しかけるとかといった言葉まで書いてあるのである。そして支払先の口座番号が記載されていたり、あるいは説明をしたいから大至急連絡しろと述べたうえで問い合わせの電話番号が書かれている。心配になった人がそこに連絡をすると脅したり騙したりして入金させようとする詐欺行為である。最近はその手口もどんどん巧妙になっており、我が家に届いたもののようにまるで裁判所から送付されているかのような文章のものも多いようだ。こういうハガキを受け取った人のなかには、不安に感じるだけでなく、家族が使ったのかと思いこみ支払いをしてしまう人も出てくる。そこが犯罪者の狙い目なのだ。
しかし、全く身に覚えのない請求だとしたら、たとえ脅迫的な言葉が書かれていても断固として無視すればよいのである。無視をし続けても結果として何も起きないのだ。何故なら、詐欺犯は入手した名簿に基づきアットランダムに請求書を大量に送っているのであり、その中の何人かが引っかかって入金してくれたらよいと思っているのである。従って連絡しなかったからといって経費を掛けて督促に来るということはあり得ないのである。それでも不安だという場合には、相手に連絡したり支払いをする前に「富山市消費生活センター」に相談して下さい。決して一人で対応をしないことが大切である。
 ところで僕の妻は例のハガキを直ぐに捨ててしまえばよいものを、記載してある電話番号にチョッカイを出して掛けてみたのだそうだ。「全く身に覚えのない督促ですが内容を説明して下さい。架空請求じゃないの?」などと言っているうちに相手が黙って電話を切ったと僕に自慢していたが、詐欺犯とは言え時間を浪費する訳にはいかないのだからヒマな奥さんの相手はできなかったというところか。



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