穀物のゆくえ

森 雅志 2008.07.05


 輸入穀物の高騰が止まらない。その結果、多くの食料品が値上がりしているようだ。その要因として原油価格の高騰もあるが、なんと言っても世界の穀物需給がひっ迫傾向にあることが大きな背景だろう。
 シカゴ相場の農産物価格の推移を表す資料によると、とうもろこし、小麦、大豆、米などの価格が2008年に入ってから軒並み史上最高価格を記録している。高騰の背景は色々と考えられる。一つには途上国を中心に人口が爆発的に増加していることであり、二つには中国、インドなどの国民の所得が向上し、食生活が大きく変化していることである。三つには世界の各地で砂漠化が進んでおり、わが国の全農地面積を上回る、500万ha以上の土地が毎年砂漠化していることがある。四つには穀物からエタノールなどの燃料が作られているという状況もある。そして困ったことに、世界の投機マネーが穀物相場に介入しているという理由も考えられる。穀物の先物取引によって価格上昇が起きているということだ。さらには、世界規模の高騰を受けて多くの国が輸出規制に乗り出してきた。自国の国内価格を高騰させないために輸出を禁止するか輸出税を高くし始めたということだ。その結果、世界中で食料の奪い合いが始まり、わが国の食料調達に支障が出始めているのだ。
 いよいよ食料安保を議論する時代に入るのだろうか。わが国の食料自給率は39%しかない。残りは輸入に頼っているのだから穀物価格の高騰は極めて深刻な問題なのである。
 もっと国内生産量を増やせば良い訳だが、もしも主要な輸入農産物を国内で生産しようとすると現在の国内の農地面積の3.5倍の農地が必要になる。現在全国の耕地面積は467万haであり、かつて農地であった多くの土地は既に改廃されてしまっている。農地面積を3.5倍にすることは不可能である。逆に、国内耕地面積だけで食料供給を行うとしたら、我々の食生活を昭和20年代の水準にまで落とさなければならない。これもまた不可能であろう。
 わが国としては今後も経済力を維持しつつ、国民生活に支障をきたさないように何とか世界市場の中で穀物の確保に努めなければならない。そして現在ある耕地面積をこれ以上減少させない努力が必要だ。農家の高齢化などの理由で耕作放棄地が増えている現状を改善しなければならない。そのためには農地の維持対策に国あげて取り組む必要がある。都市住民が農業生産活動をする場を設けることも大切だ。さらには農業をサポートする人材の育成も重要な課題である。
 一方、わが国において毎年約1900万トンもの食品廃棄物が発生している事実もある。家庭から排出される台所ごみの約4割が食べ残しあるいは手付かずの食品なのである。まだ食べられるものを捨てながら食料危機だと言う資格はあるまい。個人レベルでは先ずは食生活の見直しから始めるということか。



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