1万尺が待っている

森 雅志 2008.08.05


 いよいよ今年も夏山シーズンの到来だ。登山はハードな面もあるけれど、行程を終えた後の達成感がなんとも言えない。途中で行きかう人たちと声を掛け合うことも楽しみだ。何よりも山頂に立って遠くを見晴るかすときの爽快感は格別だ。今は忙しくて滅多に山へ行けないけれど、時間が出来たら挑戦したい山が沢山ある。五十歳になってから登山を始めた僕としては時間がないのが残念だ。若いときに機会を得なかったことが悔やまれる。
 そもそも小学五年生の時に初めての立山登山が取りやめになったことが僕と山との出会いを遠ざけたのかも知れない。例年、学校行事として立山登山があったのに、僕らの学年が行こうとした年に、宿泊予定の県営国民宿舎が焼失し中止となってしまったのだ。その後、中学一年ではキャンプクラブに入り、夏の登山を目標にテントを張る練習をし、重いリュックを背負って階段の上り下りをして訓練していたのに、夏休みに入りいよいよ明日が出発という日に引率の先生が入院してしまい、またも中止という憂き目にあったのだった。この二つの出来事以来なぜか立山に縁がなく、三十代半ばでやつとの初登頂。遅いデビューとなったのである。
 仰ぎ見る立山の素晴らしさは富山県民の誰もが実感している。富山を離れた富山人もまた故郷の象徴として立山の姿を心に刻んでいる。立山は僕らの誇りであり、希望の山なのだ。それだけに今の子供たちには是非とも小学生の頃から立山登山をしてほしいと思う。仰ぎ見るだけではなく、室堂から一の越を経て雄山山頂までを頑張って歩いて、登りきった達成感を是非とも感じて欲しいのだ。そのうえで感じる立山に対する思いを大切にして生きていって欲しいのだ。
 そんな思いから、市内の小・中学校の生徒を対象に立山登山に際しての交通費の一部を助成する事業を始めた。学校やPTAの行事として立山に行く際の観光バス費用や立山有料道路通行料の一部を市が負担する仕組みである。何とか1000人程度の利用があれば良いと思っていたが、7月半ばの集計で小学校23校、中学校1校から申請があり、約1500名が参加予定となっている。また、市役所から雄山山頂まで歩き通すという「旧立山道ウォーク」に参加する中学生の参加費を補助するメニューにも20名弱の申請があり、嬉しく受け止めている。多くの子供たちが一歩一歩足跡を刻みながら雄山頂上を目指す姿が目に浮かぶ。そうやって達成感を味わい、自立心を磨きながら大きく成長して欲しいと思う。そして立山の姿を胸に抱いて未来に向けて飛び立って欲しい。
 2年前に僕も市役所から雄山頂上まで歩いた。本当に疲労困憊したが生涯忘れぬ思い出になった。下山して前の商工会議所会頭に「これで僕も越中男児ですね。」と胸を張って話したら、「昔は下山のときも歩いてきたもんだ。」とのお言葉。いくらなんでもご勘弁を!



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