立山あおぐ特等席

森 雅志 2010.08.05


「立山あおぐ特等席」という富山市のキャッチコピーは僕のお気に入りである。市民の心のふるさととも言うべき立山連峰を愛する気持ちが表現され、加えて産業、福祉、芸術文化など様々な面で「特等席」を目指す意気込みが感じられる良いフレーズだと思う。以前からこのキャッチコピーがもっと広まったら良いと思っていたのだが、今回、面白い企画が実現した。
東京都内にある5個所の銭湯において、湯船の背景画に立山連峰と「立山あおぐ特等席。富山市」というキャッチコピーが描かれたのである。東京の銭湯における湯船の背景画としては富士山の絵が描かれていることが多い。今回の企画は、その富士山を立山連峰に書き換えてもらうという取り組みなのである。入浴客の皆さんには湯船に浸かりながら立山連峰や富山市を身近に感じてもらうことになり、お風呂の中で富山が話題になればありがたいと期待している。同時に富山市物産振興会と連携して、銭湯において富山産の清涼飲料水や健康茶、栄養ドリンクなどの販売をし、また富山のポスターの掲出をすることとしており、立山の背景画とあいまって富山の知名度の向上につなげたいと考えている。
先般、お客さんの反応などを聞かせてもらったのだが、全般的に評判が良いようである。馴染みのお客さんが「自分は富山県出身なので懐かしい。」と喜ばれたという話や、立山に登ったことのあるお客が他のお客に思い出話をされていたというエピソードなどを聞くと嬉しくなる。東京の銭湯の経営者には富山の出身者や縁故者が多いことから、店主自らが富山の観光大使になってくれているようである。
わが国は既に人口減少時代に入っている。そんな時代にあっても元気な街を作っていくためには魅力的な雇用を創出し、観光客を含む交流人口を増やしていくことが求められる。多くの人や企業から選ばれる魅力的な街にしなければならない。そのためには産業や教育や福祉や文化などの水準が高く、犯罪や災害が少なく、自然や美味しい水や食材に恵まれた富山を作っていかなくてはならない。将来を見据えたしっかりとした街づくりも必要である。同時に、もっと多くの人に富山を知ってもらうことも重要なことである。とかく宣伝下手とか引っ込み思案だとか言われがちな富山であるけれど、これからは大いに富山の魅力をアピールしなければならないのだ。今回は銭湯がそのための舞台になったということなのである。(詳細は市のホームページを参照)
富山の良さは自分たちが一番分かっている。別に無理して県外の人に知ってもらわなくても結構だ。アピールなんかしなくてもいいじゃないか。そんな意見もあるかもしれない。「旨いモンは小勢で」という言葉がある。魅力的なことは他人に知らせず自分たちだけで満喫しようという、かなり閉鎖的な生き方である。しかしこれからは、富山の魅力を高めるためにももっと開放的にならなきゃならない。「旨いモンは大勢で、旨いモンはみんなで」とね。



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