「ハロー・ドーリー!」をもう一度

森 雅志 2013.03.05


 東京の渋谷ヒカリエにある劇場、シアターオーブにて「ロックオペラ モーツァルト」を見てきた。この作品はヨーロッパで150万人を動員しているというスーパーヒット作品とのこと。日本人キャストによる日本語のリメークとは言えエキサイティングなものであった。幅広い世代の観客がホールを埋めている様子も興味深かった。その中で1人だけいつものようにスーツを着て観劇している自分の姿が滑稽ではあったが。
 シアターオーブは素晴らしい劇場だと思った。昨年オープンしたばかりなので国内のホールとしては最新鋭の機能を持っているのだろう。レーザー光線による複雑な演出や音響の素晴らしさに驚かされた。ホワイエの吹き抜け空間も開放感があってよかった。ホワイエから渋谷駅の方を見下ろしていると、「昔はここにプラネタリウームがあったな。」などと学生時代のことが思い出された。
 ところで、ロックオペラとミュージカルとは違うものなのだろうか。よく分からなかった。分からなくても楽しめればそれでいいのだろう。ニューヨークのブロードウェイでも何度かミュージカルを見たが、不充分な英語力でもそれなりに楽しめたのでそれでいいのだと思う。生のステージの魅力は臨場感にあると思う。演技者の熱気や感情移入が伝わってくることにあると思う。昨年、横浜で見た劇団四季のミュージカル「キャッツ」では出演者の汗までが伝わってきたほどだ。演技者とスタッフやオペレーターなどの人たちが積み上げた結晶の汗なのである。稽古の日々から公演終了までの長い緊張と自己管理の果ての汗なのだ。芝居やミュージカルの魅力の一端がそこにあると思う。
 オーバード・ホールにおいても優れたミュージカルが何度も上演されている。中でも、富山市民文化事業団自身の企画・制作によるミュージカルが特徴的である。東京発の作品ではなく、地方都市発の作品であることに意義があるのだ。地方からの文化発信ということである。一昨年には「回転木馬」、昨年は「ハロー・ドーリー!」、そして今年が「ミー&マイガール」というミュージカルの上演シリーズとなっている。どの作品も、富山市出身の元宝塚歌劇団トップスター、剣 幸さんを中心にすえ、県内外のキャストによる本格的な作品となっている。今年の作品には宝田明さんや中尾ミエさんらにも参加いただいた。
 特に昨年上演した「ハロー・ドーリー!」はブロードウェイで大ヒットしたミュージカルで映画化もされたものだが、日本では日本人による日本語の上演がされたことがなかった。それが富山市において日本初の上演となったものなのである。ある意味、快挙だと言えよう。おかげで上演後の演劇やミュージカル関係者の評価も高く、再演を望む声も出ていた。
 そういう中で、この度池袋にある東京芸術劇場のほうから要請があり、同劇場とオーバード・ホールにおいて再演されることとなった。今年の8月16日、17日、18日の3日間はオーバード・ホールにおいて上演し、23日、24日、25日の3日間は東京芸術劇場にて上演する。県内のキャストや特別出演の富山工業高校の吹奏楽部も出演する。文字通り、地方発の文化が中央において再演されるということだ。関係者の皆さんの熱演を期待したい。そして、多くの富山出身者や縁故者の皆さんに観劇してもらえることになれば無上の喜びである。劇場にアプローズの声が響きますように…。


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