2020年3月7日
数日前に、父が読みたい本を読み切って手持ち無沙汰にしている風情に触れた。思いついて、僕の書斎にある吉川英治全集の中から「宮本武蔵」全四巻を選んで父に読んでみることを勧めてみた。最初はさすがに取っつきにくそうにしていたが、二日目くらいから読み始め、六日目にあたる昨日、ついに第一巻を読み切ったと言ってくれた。僕は大変に驚いてしまった。この全集は発刊された昭和55年に順番に買いそろえたものである。当時は当たり前だったのだが、1ページが二段組で、活字も最近のハードカバー本とは違いとても小さい。今の僕では音を上げてしまうに違いない難読本である。それを96才の父が、いくら時間がたっぷりあるとは言え、五日間ほどで読み切るとはね。本当に驚かされた。この調子で読み進めると一か月のうちには全四巻を読み切るのではなかろうか。いやあ、参った、参った。この「宮本武蔵」は吉川英治が22年間にわたり書き続けた時代小説の中でも最も読まれたと言われている名作である。そうは申せ、もともとが昭和11年から14年までの間、朝日新聞に連載されたものである。したがって作品の流れが時にはダラダラしたり背景描写が細かすぎたりする傾向があって、一言でいうと読みにくい作品であったと記憶している。さすがの父もちょっと細かすぎる小説だという読後感を口にしていた。はたして二巻目に手をつけるのかどうかが楽しみである。この吉川英治全集は全部で58巻ある。まさかこれを読み切ることは無いだろうけど…。旺盛な読書欲には圧倒されてしまう。恐るべし、96才!!! 僕も負けないで頑張ろう。塩野七生さんの作品を全部読もうと決めてから数年経つのにまだ達成できていない我が身を恥じるのみ。