森のひとりごと

2019年10月4日

2019.10.04

 一昨日、薬師岳の太郎小屋まで行ってきた。薬師岳方面遭難対策協議会の会長の立場として山系の山小屋経営者の中心人物である五十嶋博文さんにお会いして今シーズンの事故の状況を伺うことが責務だと思い、毎年のように協議の時間を持ってきた。昨年は僕が入院したことで山行ができなかったけれど2年ぶりにお会いしていろいろとお話を聞くことができた。また環境省の交付金事業で実施されている登山道の改修事業の状況を見ることができたし作業をしている人たちと話をすることもできた。今月の末には今年の夏山シーズンが終わる。今年の山行は大汝山と太郎平の2件だけだったけれど去年と比べれば大違い。まあ良しとしようか。
 さて、本稿で書きたいのは下山した後のエピソードである。
 下山した後、同行者と飲食をした。疲れもあり早めに帰宅しようと思い富タクをお願いした。酔いも手伝い運転手の方と談笑しながら自宅に到着。登山の際にはいつも登山用ザックに財布を入れずに小さなビニール袋にカードとタクシーチケットと現金を入れてポケットに突っこんで移動している。この日も同じようにしていたのでビニール袋からタクシーチケットを取り出し1枚ちぎって支払いをした。家に上がりしばらくして、袋の中にはカードとチケットしかなかったことに気が付いた。室内や玄関前など探したのだが現金を見つけることができず途方にくれていた。やがてタクシーの中で支払いをした際に落としたに違いないと気付き、富タクの配車センターに電話をかけた。事情を話すと通話を切ることもせずに僕の乗っていた車の運転手に確認してくれた。受話器を耳にあてながらもほとんど諦めていたのだが、シートベルトの留め金の挿入口の隙間に小さく折った一万円札が3枚あったと報告してくれた。僕のほっとした様子が感じられたのか親切にも家まで届けてくれると言う。しばらくして届いたお札を見ながらなんと正直な運転手なんだろうかと感心させられた。車内に残されていたのは財布やバッグじゃなくて裸の一万円札だったのにちゃんと帰ってくるなんて。そのうえ僕のあとに一人お客さんを乗せたというから驚いた。富タクさんには日頃から随分とお世話になっているうえにこの度は素晴らしい対応をしていただいた。感謝にたえない。しっかりとした教育がされている良い企業だと感じさせられもした。有り難い経験であった。他人の目で見れば愚かなエピソードではあるけれど…。

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