森のひとりごと

お洒落な?体験談

2019.11.05

 ちょうど10年前のことになるが、職員の有志とポートランドやサンフランシスコに視察旅行に行ったことがある。その時の面白いエピソードを披露したいと思う。

 僕らはポートランド空港で出発を待ちながら飲食をしていた。やがてウエーターが笑顔で近づいてきて「君らは素晴らしい友達がいるね。君らの飲食代は先ほど店を出た人が済ませていったよ。ラッキーだねぇ。」と告げてくれた。僕らは何が起きたのか分からずにいたのだが、確認してみると、見ず知らずの白人の男性が僕らに御馳走してくれたということであった。それも僕らには何も言わないで黙って支払いを済ませてくれたのである。確かにラッキーではあるが釈然としないでいると、となりにいた白人女性が「彼は日本語が凄く分かる人であなた達の会話を聞いていて思うところがあったのではないのか?」と推測してくれた。

 僕らはその時、ポートランドの交通政策や街づくりの素晴らしさを絶賛していた。また職員の対応を褒めちぎっていたのだった。(もちろん富山弁で。)おそらく彼女の推理どおり、富山弁の会話を理解できるほどに日本語が上手な白人男性が偶然にとなりのテーブルにいて、僕らの会話の内容を嬉しく受け止め、黙って御馳走してくれたということなのだろう。

 もしも僕が彼の立場だったら、一緒に会話に加わったうえでこれ見よがしに支払いをしたに違いない。それにひきかえ、黙って支払うという大人ぶりのスタイルには驚かされてしまった。こういうのをお洒落とかダンディズムとかと言うのだろうなあ。真似ができないけれど、いつかどこかで富山市の取り組みを評価してくれる外国人の会話を耳にしたならばお返しをしたいものだと思っている。

 次は数カ月前の出来事。あるお店で知人とお酒を楽しんでいると、やがて若いカップルが来て店主夫婦と談笑を始めた。聞いてみると、男性の方がかつてこの店でアルバイトをしていたとのこと。その彼が同行の女性にプロポーズをしてOKを貰ったので、かつてお世話になった店主夫婦に報告に来たのだということだ。店主夫婦だけじゃなく、お店の客全員が驚き、そして温かい目で二人を見つめ、おめでとうと言って祝福したのだった。僕はやりすぎかなと思いつつシャンパン一本をオーダーし、みんなで乾杯をして若い2人を祝福しようと提案した。そして厨房にいたスタッフも含めた全員で二人の未来が輝くように願ってグラスを空けたのだった。2人はすごく喜んでくれ、僕らはみんな幸せな気分になることができた。僕もそれなりにシャンパンをお洒落に使える大人になれたのかな?と思った次第。

 最後は数日前のエピソード。高岡にある馴染みのお蕎麦屋さんでの出来事である。近くにあるショッピングセンターが増築オープンしたため、周辺の道路が大渋滞であった。店内に関西風の言葉で話す家族連れのお客さんがいた。そのうちに食事が終わり、精算をしながら店員と話す男性の口から、京都に向かうため北陸自動車道高岡砺波スマートインターに行きたいという声が聞こえた。僕はこっそり他の店員を呼んで、渋滞を避けるためには能越自動車道の高岡インターに向かう方が良いと教えてあげたら良いのではと告げた。すぐに気付いた彼女はその旨を伝えるため京都からのお客と話し始めた。やがて彼らが店を出る際に「親切な良い店だね。」と話しているのがかすかに聞こえた。僕と店員とは目を合わせながら小さく笑っていた。以前の僕なら京都へ向かうお客に直接伝えていたに違いないと思うが、今回少しはお洒落に対応できたのかな?ポートランドの彼には遠く及ばないけれど…。

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