2025年9月5日
昨日、幸水のカイモギをした。カイモギ? 梨の収穫は色味の進んだものから、言い方を変えれば、成熟の進んだものから順番に採取していくのだが、もう最終段階になると畑になっている実の数も少なくなるので、まだ少し青いけれど充分熟しているだろうと思われるものも含めて樹に残っているすべての実を一気に収穫してしまう。この全部の実を、えいやあー!とばかりに採取することを我が家では昔からカイモギと言ってきた。どの範囲のエリアでこの言葉が使われているのかは知らないが、少なくとも近所の生産者の間では「うちは今日カイモギしたちゃ。」などと使われているのだ。おそらく漢字で表記するとしたら「皆捥ぎ」となるのだろうなあ。わが家の幸水種は昨日の朝きれいにカイモギされたので寂しいけれど畑には一個の実も下がってはいない。いや下がっていないはずだ。毎年1つや2つの見落としされた実が葉が落ちた頃に見つかるのだけれども…。今年の作は収穫開始直後は小玉傾向で肥大化が進まなかったけれど、後半は玉も大きく色味もきれいで満足できる収穫であった。それだけに昨日から達成感と充実感につつまれている。梨栽培は1年を通しての作業が続く。収穫が終わるやいなや施肥がはじまり、鉄線の棚に誘引されている枝を解き放ち、古くなった枝を落とし、たくさん伸びている新梢の剪定をし、剪定枝の処理をし、年末までには畑内に落ちている落ち葉の処理をし、新年に入るやいなや剪定と枝の誘引作業が続く。そして花芽の整理、交配種の花の採取と花粉化、人口授粉と続いていく。さらにはせっかく着果した実なのに間引きする摘果作業に流れていく。その間に何度も重ねられる防除作業と除草作業。今年のように渇水の年にはスプリンクラーを使っての散水作業も加わることとなる。いやはや。農作業日誌を見てみると今年は1月2日の午後からもう仕事をしていた。2月3日から2月27日までは積雪のため農作業をしていないもののその後は元気に働いてきたことになる。(もっとも僕の場合は講演やシンポジウムなどのため県外に出張することが多いためスケジュールの組み方にも苦労が多い。出張は基本的に日帰りとして翌朝は畑作業とする。熊本日帰り出張という日もあったっけ。そうは言っても羽田富山間の最終便が早くなっていることから札幌、余市と宮崎は日帰りができなかったけれど…。)
そんなに頑張って来た作業の集大成として収穫作業があるのだけれども、今年は8月17日に初収穫して9月4日にカイモギしたのだから20日間ほどで終わったことになる。この20日間は5歳下の弟と二人でフル稼働なのだ。73歳と68歳の爺さん二人が仲良く親の残してくれた梨畑で働くことができることは有難いことだと言うべきだろう。多くの人から美味しい梨だったと言ってもらえることもまた有難い。有難い収穫作業のために1年を通して働いてきたのだ。今日は気持ちの良い雨の休みとさせてもらった。と思っていたら、直ぐにも撒かなきゃならないアミノ酸などの肥料が届いた。カイモギした日に来年のための肥料が届くとはね。やれやれ。