森のひとりごと

2025年6月22日

2025.06.22

 一昨日は久し振りに最終の新幹線で東京から帰ってきた。持ち込んだ生ビールを飲みながら読みかけの小説に夢中になっていると上野駅を出てしばらくした頃に車内放送が流れた。「お客様の皆さまでお医者様か医療関係の方がいらっしゃったら4号車まで来ていただけませんか。」とのこと。どなたかが乗り合わせていたらいいのになあ、と思いながら意識は小説に戻っていた。やがて減速していることに気づき、訝しく思っていると上田駅で停車してしまった。当然車内放送があり、容態の悪い乗客を救急車に繋ぐために緊急停車したと言う。先の放送のことなどすっかり忘れていた僕は自らの緊張感の無さに恥じ入るばかりであった。それどころか、もうちょっとすれば長野駅なのになあなどとさえ思っていた。車内に医療関係者がいたのかどうかは分からなかったが車内スタッフと運行管理者との間で緊張したやり取りがあり、停車予定駅じゃない駅での緊急停車となったに違いない。最終便ということもあり利用者がいると予想される長野駅ではなく、もう停車予定の便がない上田駅を敢えて選択して救急スタッフをホームで待たせていたのかも知れない。具合が悪くなった方の無事を祈るばかり。同時に関係者の緊張が続いたであろう対応にも感謝したい。そしてこんな時に何にもできない我が身が情けないとつくづくと思った。思えば過去にこういう事態に遭遇したことが2度ある。一度は羽田に向かうANA便の中、看護師の人が乗り合わせていた。もう一度は越後湯沢に向かうほくほく線の中、この時は「まだインターンなんですが」と言う青年が駆けつけていた。もちろん僕は何にもできなかった。それでも騒がずに静かに見守ることはできていた。求められれば荷物を持ってあげることもできたはずだ。緊急事態が発生した時の自分の役割について改めて思わされる日であった。思えば救急車に遭遇した時には左の路側に停車してハザードランプを点けてやり過ごすということはしっかりやっている。どんな時でも全体の利益から見てどう行動すべきかということを意識している。なるべく…ではあるけれど。譲り合って全体としての利益を見つけていく。これが僕にできることこと。若い頃からそうやって生きてきた。もちろんこれからもだ。

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