僕が初めて車を買ったのは昭和52年、25歳の時であった。60万円で中古のホンダ・シビックを買った。エアコンをつけるとそのうちに水蒸気が噴き出してくるという代物であったがよく働いてくれた。１年半後に52万円で売って、アコードに乗り換えた。爾来、何台もの車に乗ってきた。義理が絡んで断り切れず身の丈を超えた車に乗っていた時期もある。どの車も僕自身や家族の記憶に欠かせないものであり、思い出作りのパートナーであった。
　そしてこの度、過去に乗っていたどの車よりも高額の新車が納車された。もうすぐ７２歳になろうとする高齢者にとって身の丈を大きく超えた新車である。運転免許証の期限切れ失効や返納を考えてもよい年齢でありながらの暴挙とも言えるが、これからの梨栽培者としての営みに欠かせない最高のパートナーになってくれるに違いない。おそらく我が人生において最後の新車購入になるであろう。新車はトヨタでもホンダでも日産でもなくMARUYAMA製のステレオスプレーヤーである。末尾に新車の横に立ってにやけている僕の写真を掲載することとした。子供の様に納車日を待ち焦がれていた心中がうかがわれる。
　この車は梨畑の防除消毒作業をする梨栽培に欠かせないものなのである。キャビン付きでエアコンもついている。昨年の夏に37度や38度という炎天下でフルフェイスのヘルメットをかぶり、全身を雨合羽に覆われながら消毒作業をしていて発作的に最新鋭車を買おうと決意したのであった。命がけと言ってもいいくらいの危険な作業を続けるよりも楽しみながら農作業を続けていこうと決めたのである。最近になって何人かの人から僕の栽培した梨が美味しかったと言われて心底嬉しかった。今年もそう言ってもらうための新しいツールを手に入れた次第。新車を使っての最初の防除作業が月末に予定されている。楽しみながら取り組んでいこう。今年も頑張るのだ。

早速乗車してみた